投資と経済 GOEMON

会社経営10年目のアラサー🏙️/2023年6月からブログ執筆本格開始/ 株式投資や社会人のスキル向上に役立つ記事を書いています。

ジリジリ下げる展開、CPIは大した動きにならない可能性

7月2週の米国株相場は12日に発表されるCPIを待ちながら、全体としてはジリジリと下げる展開となりそうだ。

S&P500、NASDAQ100ともに小幅な下落となった前週は製造業景況感指数がコロナ禍を除き、リーマンショック以来の低さを示唆した所からスタートした。"非"製造業は反対に、景況感がよく、4ヶ月ぶりの高水準で雇用指数も雇用拡大を示す結果となった。週半ばのADP民間雇用者数は市場予想の倍の雇用者数を示すサプライズはあったものの、週末の雇用統計の非農業部門雇用者数は予想を下回るなど、なんとも判断が難しい一週間になってしまった。

総合してみると、FRBタカ派姿勢を覆すデータとはなっておらず、年内2回の利上げ路線は引き続き維持されていると見ている。

12日に発表されるCPIで大きなサプライズが無ければ、今週後半以降もこの流れは続くハズだ。

FOMCメンバーの発言に注目

CPIの発表以外ではFOMCメンバーの発言に注目が集まっている。

日々、かなりの数のニュースを追っている私の見解としては、現段階でハト派な発言をするメンバーは限られているため、タカ派よりな発言が見出しを飾ることが多くなる一週間となるだろう。「年内2回の利上げが適切」とまでは踏み込まないだろうが、先週発表された雇用統計などを受けても「確信は持てない」といった趣旨の発言がされそうだ。

少なくとも、7月FOMC会合で0.25ポイントの利上げはコンセンサス通り行うことを示唆すると同時に、「9月会合までは期間が空いているので、その間のデータ次第であるが、やるべきことはまだ残っている。」と9月の利上げ見送りを予想するトレーダーたちに牽制するような発言が予想される。

こうした発言を受けて今週の米国株相場はCPI発表まではジリジリと下げ、CPIでも大きく良い方向へサプライズが起きない限り、大まかな流れは変わらないのではないだろうか。

FOMC議事要旨で見えたタカ派寄りな利上げ見送り

6月のFOMC会合の議事要旨が公表され、全会一致で政策金利を据え置いたものの、一部のメンバーは利上げを支持していたことがわかった。

ドットプロットでは年内に0.5ポイントの利上げ見通しとなっていたが、FOMC会合直後にはほとんど市場は信じていなかった。しかし、パウエル議長の議会証言やECB主催のフォーラムでの発言、一貫したタカ派姿勢も相まって、徐々に市場がFRBの見通しを織り込みつつある。

市場では7月のFOMC会合で0.25ポイントの利上げは92.4%まで予想が上昇し、9月での利上げ予想は24.0%まで増えている。1ヶ月前は15.69%だった。

正直なところ、短期金融市場の予想は直近ではあまり参考になりそうもなく、雇用統計後の動きを見ても意見が割れている。

雇用統計を市場はどう捉えているのか

雇用統計の主要な数値をおさらいしておくと、下記のものが最低限把握しておくべき数字だ。( )は前月の数字。

・就業者数:20万9,000人(修正値 30万6,000人)
・失業率:3.6%(3.7%)
・平均時給 前年同月比:+4.4%(+4.3%)
・平均時給 前月比:+0.4%

就業者数は予想の24万人前後から下触れ、コロナ禍前 2015年~2019年の平均 19万人程度に近づきつつあることが示された。これを受けて、債券市場はFRBタカ派姿勢が和らぐと見て2年債の利回りが急低下した。

2年債の利回りが低下するのはどういう意味か?

一時2年債の利回りが低下したのは、市場が2年先の米国金利が下がることを予想したということである。

債券はとっつきにくいので、別途債券の解説を何本かに分けて書く予定だが、ひとまず簡単にだけ説明しておこう。今回一時的に利回りが低下したのは下記のような流れをイメージして欲しい。

就業者数が市場予想を下回る

市場:金融引き締めが労働市場実体経済へ効いて来ているのでは?

市場:FRBが利上げ停止、利下げを(今の市場織り込みより)早めるだろう

利上げ停止、利下げがあるならば、今ある2年債(既発債)より利回りの良い2年債は新規で発行されない

今ある2年債(既発債)の利回りが魅力的なので買いが集まる。買いが集まり価格が上昇すると、利回りは低下する

その結果となった利回りが金融市場が織り込んでいる2年先の金利

かなりザックリとだが、細かいツッコミは抜きにして、全くもって債券のイメージがわかない方はこのような流れで認識しておいて欲しい。

雇用統計を総合的に判断すると何も変わらなかった

さて、こうして雇用者数の伸びが市場予想を下回った結果、一時的に2年債の利回りが低下し、市場はハト派ムードに傾いたかと思いきや、すぐに反転した。

平均賃金が上昇している点を懸念し始めたためだ。

サービス価格において、人件費が重要なファクターとなっていることは既知の通りだ。就業者数が少し落ち着いても、賃金がまだ伸びているならば油断はできないと市場は判断したことになる。

終わってみれば、2年債の利回りは雇用統計発表前とほぼ変わらずという展開になった。

CPIも大した動きにはならない可能性

今週の注目はなんといっても12日に発表されるCPIであり、その中でもコアCPIが重要だ。

市場予想は前年同月比+5.0%(5月は5.3%)となっていて、この数値から大幅に乖離することはないだろう。ブレても±0.2ポイント程度だろうし、仮にブレたとしてもそれほど大きな影響を市況に与えることはなさそうだ。

なぜならば、FRBが気にしているのは結局のところコアPCEだからだ。

CPIはPCEより早く発表される指標なので、PCEを予想する上では重要とは言えそうだが、昨今のインフレ相場を判断することにおいては徐々にその影響力は弱くなっているように思える。

前週もお伝えしたように、パウエル議長はエネルギーと食品を除くPCE(コアPCE)についてFOMC会合やその他の講演などでも何度も言及しており、こちらの数字がFOMCメンバーの見通しに沿っているか、乖離しているかを把握する方が重要だろう。

彼らは年末におけるコアPCEが3.9%になると予想し、それ故に年内残りで0.5ポイントの利上げを見込んでいる。

だから年末に向けてコアPCEが3.9%へ落ち着きそうか、現在の4.5%前後で下げ止まりしそうか、それとも3.9%より急速に落ち込むのかで利上げ継続、停止、利下げの判断をすべきと言える。

そして、繰り返しになるがそのコアPCEの前に発表されるのがCPIなので、今月末 28日に発表されるコアPCEを予想するために、CPIの数字を見ておくべきだ。

短期のトレードにかけるのであれば、CPIとPCEの相関性を過去の傾向から図り、相場の見通しと乖離があるかをチェックすると良いのではないだろうか。

残念ながら私には短期で売買する度胸と資金がないため、今週もゆったりまったり、長期的に成長するであろう個別株を物色する日々を送る予定だ。

まとめ

・雇用統計が終わったものの大局には影響はなさそうだ
FOMCメンバーの発言に注目
 ・FOMCメンバーはタカ派寄りな発言が多くなりそうだ
・その発言を受けてCPIまではジリジリと下げる展開が予想される
・CPIは大きなサプライズは産みにくいだろう
・インフレ、利上げ動向においてはCPIより月末のコアPCEが重要