投資と経済 GOEMON

会社経営10年目のアラサー🏙️/2023年6月からブログ執筆本格開始/ 株式投資や社会人のスキル向上に役立つ記事を書いています。

パウエル議長の発言から読み解く、年内2回の利上げの可能性

低調なPMIを受け、リセッション懸念が強まってスタートした6月26日週の米国株相場は最終的には前週末比上昇で終えた。

1.週前半の経済指標は好調で相場は上昇~様子見

前週の前半では、スタートこそ不調だったものの、その後の経済指標を受けてリセッション懸念が後退し上昇した。

米消費者信頼感指数が2022年1月以来の高水準を付け、労働市場が引き続き好調であることが示された。米住宅関連の指標も発表され、昨年大きく下落した住宅価格は持ち直しつつあることが示され、S&Pケースシラー指数は3ヶ月連続の上昇となった。高金利下で中古住宅の供給量が2019年比で半減している中、新築住宅に需要が移りつつあるようだ。

これら一連の経済指標を受け、市場ではリセッションが年内には起こらず起きても来年だろうというコンセンサスが一段と進んだ。しかし、相場全体としてはまだ高値警戒感が拭えず、若干の上昇を試みた後に失速して横ばいとなった。

今後発表される、各企業の四半期決算や週後半に発表される米個人消費支出(PCE)の結果を待つ格好だった。

2.ECBフォーラムでタカ派姿勢のパウエル議長

前週の後半では、ECBが主催する国際フォーラムにFRBパウエル議長や日銀の植田総裁などがパネル登壇し、各メディアでその発言に注目が集まった。

発言内容そのものは以前から一貫して同じだ。それでもタカ派発言を繰り返し主張するパウエル議長のニュース記事が散見された。その影響か、ようやくFRBの見通しが市場へ織り込まれてきたようだ。

1つ目は年内の利下げ見通しは無いということ、2つ目は7月のFOMC会合での利上げだ。前者はここまで経済指標が強く推移するとは思っていなかったトレーダーたちの見通しが覆されたことと、銀行不安や債務上限問題による影響が沈下してきたことが関係している。後者はそれらに加えて、ようやくパウエル議長の発言に市場が耳を傾け始めたと言えるだろうか。

すぐに忘れてしまう私を含め、皆さんも思い返して欲しいが6月はFOMC会合に加えて、議会証言もありパウエル議長の考えを知る機会はたくさんあった。その2つのイベントでパウエル議長は一貫して「年内利下げを主張した人はいない。利下げは適切でない。」といった主張と「(FOMCメンバーの)大多数が利上げを必要だと考えている」と伝えてきた。

だから、特に新しいニュースでは無いものの、これらの発言をようやく市場が織り込んだということになる。

3.個人消費支出(PCE)のコアは若干の鈍化

そして、パウエル議長が6月のFOMC会合で「インフレはまだ沈下していない」と判断する材料として語っていたのが前週後半に発表されたコアPCEだ。

6月のFOMC会合で「コアCPIが低水準で推移しているのになぜ追加利上げを示唆するのか?」との質問に対して「個人消費支出(PCE)物価指数のコアをみても、ここ6カ月あまり進展がみられず、目標をはるかに上回る4.5%以上の水準で推移している」とパウエル議長は回答した。

さらに他の回答でも繰り返し、コアPCEに言及している。

「(FOMC)参加者は、23年末のエネルギーと食品を除くPCE物価指数の上昇率は3.9%になると予想している。つまり、継続してインフレ率が上昇している。我々がもっと努力する必要があるということを物語っている」

FOMC参加者は、PCE物価指数のコアの上昇率が今年末までに3.9%に下がると考えている。大幅な前進を期待している。我々は透明性を確保し、インフレを下げることに注力する」

日経新聞

つまるところ、利上げの判断にそれだけコアPCEを重視しているということだ。

さて、そのコアPCEはどうだったかと言えば、前年同月比+4.6%となっている。

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米PCEコアデフレータ(前年比)/ 赤:結果、青:予想

予想の+4.7%は下回ったものの、前月比でも+0.3%と高止まりしているように見える。この結果を受けて短期金利市場の7月利上げ織り込みは87%程まで上昇している。

※記事:市場の利上げ/利下げ織り込みはどうやってチェックする?

ここでもう一度おさらいしておこう。

パウエル議長のこれまでの発言
・年末までにコアPCEが3.9%になることを想定
・(その場合)年内2回の利上げにより、政策金利は5.50~5.75%

コアPCE以外にも見なければいけない経済指標や、銀行破綻など突発的なイベントはあるにせよ、最近の発言に基づくシナリオで言えば今のところ年内2回の利上げは既定路線と言えるのではないだろうか。

PCEの発表毎にその減速のペースは注視しておく必要があるが、6月末までは個人消費の急減速を示唆するデータは出なかった。今週末には雇用統計が発表されるが、そこで雇用が減少し失業率が多少上がっていたとしても、まだ個人消費が細るという確信まではいかない可能性すらある。

しかし重要なイベントには変わりがないので、数値の把握はしておくべきだろう。

今週の展開としては、前週と似たように企業の四半期決算と週末の雇用統計を待つ展開が予想される。

月曜日のISM製造業景気指数の発表から、木曜日のADP雇用者数といった経済指標の発表はあるものの、それほど大きなサプライズは無さそうに思える。やはり注目は週末の雇用統計となるのだが、個人的な観測としては市場予想の非農業部門雇用者数が少な過ぎると思っている。

時事通信社が集めたデータでは20万人となっているが直近1年間で、市場予想がほぼ一致したのは2回のみで、残る全ては予想を上回る結果となっている点に注意したい。

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非農業部門雇用者数(NFP)(前月比)

6月も終わり、2023年も後半に突入。今週も頑張りましょう。

それではまた。