米国債格下げ、日銀買入オペ額据え置きで日本株下落。今夜の米国相場の解釈はいかに
YCC修正が結果として緩和維持継続の意思を市場に再確認させたと思いきや、8月2日の相場は荒れた。
昨晩の米国株式市場で格付け会社フィッチ・レーティングスが米国の長期外貨建て発行体格付けをAAAからAA+に引き下げたことを火切に、様々な思惑が交差している。昨晩は米国長期債の利回りが上昇し、米国株はハイテク株を中心に売られ、東京株式市場へもその影響が波及した。
結果として、東京株式市場は3営業ぶりに反落し、1日の下げ幅としては今年最大の下げ幅を記録している。
本日は、
1.米国債の格下げ
2.日銀の買い入れオペ額据え置き
についてまとめておく。
フィッチ、突然の米国債格下げ
突然の米国債格下げとなり、サプライズ度が大きく話題になったものの結論から言えば影響は限定的という見方が強そうだ。
というのも、格下げされたのは米国の長期外貨建て発行体であり、"外貨建て"とあるようにメインの"ドル建て"の米国債ではない。自国通貨が基軸通貨である米国政府が外貨建の米国債を発行する必要性はほぼ無いないため、金融市場への影響も低いというわけだ。
加えて、米国債の1社が格下げしたからといって、米国債の安全性を疑うかと言われればほとんどの市場関係者が首を横に振るだろう。
結果として、アジア時間の金融市場では格下げニュースのサプライズから時間が経過するにつれて米国債の価格は上昇(利回りは下落)している。結局のところ米国債以上に安全な流動性のある資産は見当たらず、米国債に回帰しているようだ。
ただ、いくつかのメディアで指摘があるように、米国の大統領選を控えて政治的な要因は不透明さが増しており、今後さらなる追加のサプライズが起こりえる可能性は排除しきれていないことを付け加えておく。
日銀の定例買い入れオペ額据え置きに揺れる市場
東京株式市場で今日一番のトピックは長期金利が0.625%まで上昇したことだろう。
日銀会合明けの今週2日間で、日銀の臨時オペの動きから長期金利の目安はしばらく0.6%でコンセンサスが取れたかと思っていた所に新しい材料が投下された。
2日午前に日銀が通知した定例の国債買い入れオペの予定額がYCC柔軟化前の27日と同額だったことだ。
買い入れオペ額の据え置きは上昇余地を与えてしまった
なぜ買い入れオペの予定額を減額したわけでもなく、据え置いただけで市場が反応し株安となっているのか。
据え置き=増額していないことが日銀の金利上昇に対する抑え付けの温度感が思った程ではないと市場が受け取ったからだ。一昨日には長期金利が0.6%まで上昇した段階で臨時の買入れオペを通知して、0.6%で金利を抑え付けた。しかし、トレーダーたちは当然ながらまだ探りを入れている段階であり、1.0%までどの程度のペースなら許容されるのか、現段階での目安は本当に0.6%なのか試している。
そんな中で日銀はYCC柔軟化前の27日と同じ額で対応しようとした。何がなんでも0.6%でしばらく抑え付けたいのであれば増額されるだろうと踏んでいただけに、据え置いたことでこれは0.6%を突破できるぞと思われてしまったわけだ。
最終的には0.625%まで利回りは上昇し、長期金利に敏感な高PER銘柄を中心に売られる展開となった。
ドル円は小刻みに動きニュースを消化中
米国債の格下げ、週末の雇用統計への上振れ警戒、日本長期金利の上昇などドル高要因、円高要因、どちらとも取れるニュースが多い中、記事執筆時点では1ドル142.5円前後で推移している。
昨晩から今朝にかけては、米国債の格下げと雇用統計の上振れ警戒から一時143.5円までドル高が進んだものの日本の長期金利上昇から円高要因も加味してドル円はいったん落ち着きつつある。
中長期的にはやはり145円までの円安が目標ではあるだろうが、雇用統計を前に予想は難しい。
日銀 内田副総裁は改めて緩和維持を強調
円安要因を強めるネタとしては、内田副総裁が本日緩和維持の姿勢を改めて強調した講演があった。
以前の日経新聞のインタビューと語っている内容は変わりないが、日銀会合後の発言で認識が変わっていないことを強調したため、市場が日銀のスタンスを再確認する材料となっている。
主な発言は下記の通り。
今夜の米国株式市場の動向が明日の日本株へ大きな影響
米国債の格下げと日銀の買入れオペ額据え置きによって長期金利が上昇、大幅な株安となった東京株式市場は短期的には明日の米国株の動向をいつも以上に影響を受けそうだ
フィッチによる米国債の格下げは日本時間の朝に発表されたため、このニュースに対する米株式市場の反応はこれからだ。金融市場への影響は限定的だとスルーして終わるのか、それとも警戒感が強まり週末の経済指標発表まで調整局面に入るのか、注目が集まる。
これで米株が何事もなかったかのように上昇すれば、安堵感から明日の日本株は反発する可能性が高い。
なお、経済指標としてはADP雇用者数の発表が予定されている。先月はこの指標が予想の倍の雇用者数を発表し、インフレ懸念が急速に高まっていた。
それではまた明日。