日銀会合後、円安・株高の流れが鮮明だ。
8月1日(火)の東京株式市場は大幅続伸し、日経平均株価は33,476円で取引を終えた。7月3日に付けたバブル期以来最高値の33,753円まであと一息という所まで来た。
その最高値からのここ一ヶ月間はYCC修正懸念や米政策金利動向の不透明や、それまで上昇してきた日本株の利益確定売り、年金基金のリバランスやETFの分配金捻出による需給面の悪化から株価は一進一退だった。
その均衡を破ったのがYCCの現行維持ではなく、柔軟化という名の修正だったことは意外だった。
昨日も触れたが、日銀会合前夜の深夜2時にリークされた日経新聞の報道後から、YCCの修正によって日銀がタカ派転換したとも受け取られた。
しかし、内容を精査すると来年度の物価見通しを下方修正したことも考慮すれば、しばらくの間は金融緩和政策撤廃はないという安心感に繋がった。
日銀の長期金利0.6%での買い入れオペ
緩和政策維持の安心感の一方で唯一不明瞭だったのは、長期金利±0.5%を目処にしながらも1.0%を上限という指値オペだ。
さっそく金融市場は日銀に探りを入れるべく、10年債は利回りが急上昇。7月31日に利回りが0.6%程になったところで日銀の臨時買いオペが入った。
これにより、ドル高円安が加速した。
何故かといえば、日本の長期金利は1.0%を上限と言ってはいるが、現段階では0.6%の利回りで上昇を止めるためにオペを入れて来るほど、金利上昇の許容ペースは早くないと確認できたからだ。
今まで0.5%が上限だったわけだが、YCC修正後もいったん0.6%程度で落ち着くことがわかった。市場参加者たちは、日米金利差はかなり開いたまましばらく推移すると確信が持てたのだ。
だから為替市場では、日銀会合前後で変わったことはなく引き続き、ドル高円安となっている。
この円安と金融緩和維持の安心感の2点から、日本株は上昇している。
円安の企業業績への織り込み余地はまだある
年初から日本株は上昇してきたが、ここへ来てもう一弾上昇する余地があるのは企業の業績見通しに円安が反映されていない余地があるからだと思っている。
というのも、日経新聞によると主要企業84社の2023年度のドル円平均想定レートは131.68円。
現在143.38円だから、8.9%ほど円安に振れている。米国の金利動向と今回の日銀会合の結果を踏まえると年度内に130円前半台まで円高が進行するのと、140円前後で推移し続けるのとでは、おそらく後者の見通しを持っている投資家が多いだろう。
円安によって企業業績に恩恵を受ける日本企業は多いため、こうした想定レートとのギャップにも確信が持て始めたというのも買いが進んでいる理由のひとつと考えられる。
ドル円は145円付近で介入警戒か
株式市場にとってはプラスとなる円安ではあるが、2日間で5円もの円安を受けて為替介入への警戒も強まりつつある。
鈴木財務相は1日、閣議後会見で「市場においてファンダメンタルズを反映されて決定されるもの。安定的に推移することが望ましい」と以前からの発言を繰り返し強調するに留まっている。
しばらくの間の目安は1ドル=145円で、どの段階で為替介入があるか探りを入れながらの展開となりそうだ。
6月の国内消費は実質で1.1%減少
ナウキャストとJCBの調査によると、クレジットカードのデータに基づく消費は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比-1.1%と減少している。
前年同月比でのマイナスは6ヶ月ぶりで、インフレの影響を受けてモノの消費が-3.8%となっている。サービスの消費は+1.5%だが、コロナの5類移行が5月だったことを考えると、その1ヶ月後のデータとしては物足りないと感じなくもない。
物価は上昇しているが、インフレ疲れを指摘する声も増えてきており、購買が鈍り始める可能性もあるだけに国内消費動向も注視していきたいところだ。
その他、個別企業の決算では大手銀行各社や電力会社などが好調だった。気になる企業の決算に関しては別途、それぞれの銘柄ごとに決算分析をアップしていく予定だ。
ニュースメモ
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